天皇の血統は方便

18.1.17

 以前に、制度としての天皇について、その成り立ちや時代背景などを書いた記事がありますので、興味がありましたらこちらもお読み下さい(読まなくても今回の記事を読むためには差し支えありません)。

 まずタイトルから誤解が生じてしまうといけないので、方便の意味について説明させて頂きます。

 元々は仏教用語だと思いますが、主に、目的を果たすための便宜上の仮の手段という意味だったり、 詭弁という言葉に近いニュアンスで使われることもあるかと思います。

 この2つの意味がそれぞれ当てはまるように説明したいと思います。

 前者の意味では、前回の記事に書いたことを引用して説明します。

 要点を簡単に説明すると、天皇という制度は、大昔、人々がなぜ病気になるのかわからなかったり、天気予報もないため作物が実るとも限らない不安であったり、法律の整備も脆弱でアンフェアだった時代に、最高の環境を用意して、些細なことに煩わせられることのない、人としての人生を全うする生き方を可能にした制度へと結果的になったというものでした。

 ここからは前回では書いていない補足の部分や新たな考察を書いてみようと思います。

 生まれてから死ぬまで、日常の些細なことに煩わされない存在とはどうあるべきでしょうか。

 できることなら生まれる前の御懐妊された時点から、産まれて無事に成長されれば次の天皇になることが決まっていることが望ましいということになるかと思います(望ましいだけであって絶対ではありません)。

 そういう意味においては、現代では早い段階でお腹の中にいるのが男児か女児かわかりますが、長らくは、産まれてからでないとわかりませんでした。

 産まれてから女の子だったら天皇になれないとやっとわかるのです。

 この辺りのことについては、いずれ女系天皇の賛否について記事を書くことがあれば詳しくその見解を述べてみたいと思っています。

 それでも少しだけ現段階で見解を述べると、なぜ男系のみだったかといえば、そう決めたほうが楽だったからであり、明確な理由はなかったのではないかと考えています。

 なぜなら、幕府の征夷大将軍も普通に男系でしたし、士農工商が本当にあったかは知りませんが、ごく一般的にも男の子が家業を継ぐというのは合理的だったのでしょう。

 それは男女差別といえばそうかもしれませんが、大昔のことに想像力を働かせてみて考えれば、生きるだけでも精一杯でわからないことだらけです。

 考えた結果そうなったわけではなく、それどころではなかったからというのが実際のところではないでしょうか。
 
 今では先進国の日本であっても、近代化されるまではある程度は法律みたいなものがあって人々の暮らしは守られていたかもしれませんが、ほんのほんの一部で、実際はかなり無法地帯だったと考えられます。

 現代のやくざ以上の無法者もたくさんいたでしょう。

 そうなれば矢面に立たされるのは男性が適していると自然とそうなっただけで、男女差別とはまた異なる状況だったと思います(意図的な差別というよりもやはりそれどころではないという意味で)。

 と、少し話が脱線してしまいましたが、天皇もまた男系が継ぐというのは仕方がない側面があったということです。

 そして、一度ルールが決まればそれを守ることが大切なのです。

 産まれてから死ぬまで、極力、些細なことで煩わせないためには、跡継ぎを決めるときもまた、争いごとがなく、自然と誰になるかが決まっていることが望ましいのです。

 だから、いったん男系が継ぐと決まってしまえば、そのままずっと続いてきたことは特に不自然なことではありません。

 そこでやっと血統は方便だという話ができるのですが、ここまで読んで頂けるとわかるかと思うのですが、血統もまた現代に続くルールの一つだということができます。

 自分が稼いだ財産を自分の血が繋がった子供が相続するというのは、今の時代でも当然といえば当然のことです。

 これもまたじっくり考えてそうなったというよりも、天皇を継ぐのは血統のある者というのは当然そうなるでしょう。

 しかし、それすら生涯をなるべく煩わせないように過ごすための方便であって、目的が果たされるのではあればその限りではないと考えることもできます。

 実際、次の天皇を天皇家でもなく皇族でもない者に決めようとすれば、かなりの争いが起きたでしょうし、そこまで寛容に物事を運べるほど成熟した社会ではなかったでしょう(今でもそんなことはできないと思います)。

 念のため大事なことなのであえて書きますが、血統主義を否定するものではありません。

 それが一番合理的だと思うからです。

 もう一つの詭弁に近い意味での方便はどこに掛かってくるかといえば、今年の1月15日に読売テレビで放送された、そこまで言って委員会NPという番組でのことです。

 明治天皇の玄孫でタレントの竹田さんが、天皇の血統が途絶えれば、天皇はそれで終わりでいいと言ったのです。

 なぜなら血の繋がりのない者に天皇を継ぐ資格はないという考えのようなのです。

 天皇の血統は、跡継ぎを決めるための一番合理的な方便であると理解できれば、このような方便(詭弁に近いほうの意味)にはならなかったでしょう。

 かなり喚き立てるように発言していたので、それを見ていて正直不快に感じましたし(私が不快に思ったかどうかはどうでも良いのですが)、明治天皇の玄孫でなければ普通にテレビ界から干されていたでしょう。

 ツイッターの方では以前にもつぶやいたのですが、同番組のコメンテーターは前と後ろにそれぞれ横並びで4人ずつ座っているのですが、前の席に座っている4人だけでいいです。

 今年に入ってから後ろの席の4人は今回も不要な発言しかしていませんでした。

 以前、たかじんNOマネーという番組があったのですが、やしきたかじんさんが亡くなられてから番組がリニューアルすると別番組になってしまい、毎週録画して見ていたのですが途中で視聴しなくなってしまいました。

 そこまで言って委員会NPも、元々は、たかじんのそこまで言って委員会です。

 かれこれ10年くらいほぼ毎週(北海道はたまにファイターズ関連で番組が放送されない)見ている番組がまた一つ、つまらなくなってしまうような気がして残念です。

 最後の方は話がかなり逸脱してしまいましたが、言論の世界では手段と目的を履き違えないことが特に重要だと思っています。

 読む人によっては過激で不快に受け取られる可能性もあるかとは思ったのですが、血統に反対しているわけではないということだけはどうしても伝えたいと思います。

 
 
 



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