昔の人の暮らしを想像してみて欲しい。
電気もなく、ウィルスが病気をもたらすことも知られていない時代、貴族に生まれなければ教育を受けることはできず文字を読むことすらできない頃、その時代の一般人は職業選択の自由もなく、与えられた仕事に従事する。
もちろん家に帰ればテレビはない、遠くの人と連絡を取ることはできない。
寿命も今より30年ほど少ない。
貴族に生まれたとしても、おそらくそれほど大した暮らしはしていない。
わからないことや煩わしいことばかりで、「人生を全う」できる人などいないか、滅多にいなかっただろうと想像することができる。
権力者であっても、いつ寝首をかかれるか戦々恐々としている。
そんな時代が数千年も続いている中で、少しずつ文明が発達してきて、日本では稀有なことが起きた。
生まれてから死ぬまで、些細なことに煩わされることなく、これ以上ない程に、人としての生涯を全うすることができる存在がいたらどんな人だろう。
それは武力によって人々を制圧した将軍や王様ではなく、貴族のように富があれば際限なく贅沢三昧で暮らすこともない存在。
最初の成り立ちは王様の中の王様のような存在だったかもしれないが、結果的にそのような、人生を全うできて、人間性を追及するという役割を担うことになったのが天皇ではないかと思う。
他の国では王様や教皇が権力を握るということはよくあっても、天皇のように人でありながら人々の見本になるような、あたかも人を超えたような身分というのは見当たらないと思う。
権力でもなく宗教でもなく(どちらの要素も多少あるにしてもそこまでではないという意味で)、生まれてから死ぬまで、普通の人が煩わせられるような些細な日常から切り離されて、衣食住はもちろん文化的に全て至高のものが与えられることによって、「人とは何か、どこまで文化的な高みに上がることができるのか」ということを追求するという側面が天皇制度にはあるのではないかと考えている。
だから当時も今も天皇に献上されるものは至高のものであること前提に用意されていると思う。
普通の人は自分が使うものを、自分が手に入れることができる範囲で選ばなければいけないが、選ぶという行為は煩わしいことにも繋がる。
至高のものを献上することによって、どれにするか迷うという煩わしさを与えないようにする。
それが結果的に様々な分野での技術の向上にも繋がっていて、ただただ豪華ということではなく、天皇を煩わせない至高の品を作るということが、日本の技術力の高さや勤勉性を育んだ側面もあると思う。
もう一度、想像してみて欲しい。
一昔前というよりはもっと昔のことかもれないが、なぜ病気になるのかもよくわかってない時代、風呂などに入って衛生面に考慮することもなかった時代、外国人が同じ人間なのかすらわからなかった時代、天気予報もなく作物が無事に実るかどうかもわからない時代、不安やわからないことだらけで、むしろ一般の人々は自由よりも拘束されることを選んだのではないだろうか(それはある意味では現代もそうかもしれないが)。
従属されている方が、そのルールの中で暮らしていくことができる。
でも世の中のどこかには、生活が保障されていて、あらゆることに煩わされずに自由でありながらも規律を持って暮らしている人がいて、人でありながら人を超えたような存在がいる。
そう当時の人々が思ったかどうかはわからないが、そうした役割を与えられた存在がいるという事実があり、その存在が少なからず人々へ影響を及ぼしていく。
それは同じ時代に暮らしていても、まるで別次元の未来から来た人がどこかにいて、そうした存在を想像するだけでも、その間は少なからず煩わしさから解放されている。
天皇と一般人の間には押し付けがましいものがなく、良い距離感で共存しているような関係性だったのかもしれない。
だからこそ天皇制度は長く続いているし、日本が民主主義になっても共存している。
その目的が果たされる限り(ほぼ勝手な解釈ですが)、これからも永続していくことが望ましいと思う。
※一応、以前にツイッターで天皇制度について語れば本一冊分になるとツイートしたことの、一部を簡易版的に書いたような形です。
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