悪質化するテロの脅威

2.1.17

 テロリズムというのはいかなる理由であっても決して肯定されるべきものではないと思うが、本来は、テロを起こす側にとっては、それが暴力によって遂行されない限り、自らの主張を伝えたり世の中を変えることはできないと信じて行う行為であったはずだ。

 テロと宗教が絡むとより一層悲惨なことになる。

 自爆テロなどの行為によって、殉職すれば、あの世で幸せになれるとか、来世でいい人生を送ることができると信じ込ませることで、破壊活動へと向かわせてしまう。

 社会構造を暴力によって変えようとするテロリズムには目的がある。

 だからこそピンポイントで、なるべく効率も考慮して、反対勢力である政治家や組織に攻撃を仕掛けることになると思う。

 しかし、宗教が背景になった途端にその標的は、その宗教家や宗教観に反した全ての存在となり、無差別的になり相手や場所を選ばなくなってしまう。

 日本では過去にオウム真理教などがそれにあたる。

 初めはオウム真理教にとって邪魔な勢力が標的だったはずが、次第にオウム真理教以外が標的になってしまう。

 そうなれば無差別テロへと進み、地下鉄サリン事件などを引き起こす。

 無差別的になった途端、テロの規模も拡大する傾向にある。

 しかし、イスラム国はテロには変わりないが、異なる性質を含んでいるような印象がある。

 その違和感について、少し掘り下げて書いてみようと思う。

 まず、イスラム国によるテロは世界中で起きている。

 しかしながらその場所がなぜ狙われたのか、共通点もなければ、そこでテロを起こすことによって何か目的が達成されるような動機もない。

 ある日突然、突発的にテロが起き、たくさんの人が犠牲になったあとで、イスラム国が後になってからそれは我々がやったことだと声明文を出す。

 このことにも違和感を感じる。

 確かに先に予告してしまえば、厳重に警備されて失敗することになる。

 でも本当に関わりがあるのか疑念が生じるくらい、そこで具体的な理由もなく、ただそれをやったのは我々だと主張する。

 おそらくその背後には、未遂に終わったり、失敗してしまったり、怖気づいてできなかったり、指令に従わずに逃げた者も相当いるに違いない。

 それも一つずつ綿密に計画を立てているのではなく、複数のグループが平行して漠然としたテロ行為(例えば人の多いところへ赴き無差別殺人を行う)をするように命じているという感じではないだろうか。

 だからこそ、そのどれかが遂行されてから、あの地域で起きたということはあそこのグループがやった(やらせた)テロだろうという後追いで情報を仕入れているから、あの声明文ということではないだろうか。

 テロ自体容認できるものではないが、その中でも狡猾で巧妙な最も悪質な手段だと思う。

 というのもその狡猾さや巧妙さというのは、結果的にそうなっているだけで、その構造はいたってシンプルなものだからだ。

 具体的な目的を遂行するためでもなく、具体的な反対勢力を滅ぼすのでもなく、その実行犯に出されている指令とは、ただ、あの辺りの国や地域の、人が集まっている場所で、無差別殺人をやってこいという内容であると考えられるからだ。

 おそらく命令をしている側にとっても、時期や地域をそれなりに指定しているかもしれないが、それがいつどこでテロ行為が起きるかは全く把握していない状況ではないかと推測することができる。

 無差別的なだけではなく、たくさんの人が殺されているのにその理由もない。

 これが最も最悪なテロの脅威ではないだろうか。

 この悪質化するテロの脅威にはどのように立ち向かうべきなのか。

 イスラム教を統括しているような大きな組織があれば、とりあえずイスラム国からイスラムという言葉の使用を禁じるべきだろう。

 イスラム国をイスラム教とは一切関係ない組織、それどころかイスラム教の教義に反する無法者として強く非難する必要があると思うが、それも難しいのだろうと思う。

 単純にそれをしてしまえばイスラム教徒もまたテロの対象にされてしまう危険性があるからだ。

 一方でイスラム国の側が何の理由もなく権益を手放すことは考え難く、世界各地でテロを起こすことによって、その勢力の維持や拡大を目論む限り、凄惨な事件が続くことを意味している。

 資金源を断つことや、武力行使など様々な手段で解決を試みている最中かもしれないが、解決する方法があるとすれば、それこそ既存の大国や世界的な組織では見えない方法だったり、逆に大国側の既得権益を守るために受け入れ難い内容である可能性が高いため、結局は根本的に社会構造が変わっていかない限りは難しいことなのだろうと思う。

 

 

 

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